日本の助成財団の現状 -概況

概況

-2020年度調査結果(2021年6月更新)-

1-1.助成型財団の定義

2008年12月、新公益法人制度が施行され、当初2万4千法人あった公益法人は特例民法法人を経て、合併や解散等で約2万法人となり、2013年11月末までに公益認定か一般法人への移行を申請し、結果として約9,000法人が公益に移行し、残りは一般法人へ移行した(図1)。
2021年3月現在では、その後の新設も含め公益法人は9,794法人、一般法人74,683法人が活動している(公益財団法人5,594、公益社団法人4,200、一般財団法人7,743、一般社団法人66,940 ※1 国税庁の法人番号公表サイトでの検索より 2021.3.8現在)。
また、公益目的事業の事業類型別(18類型)の法人数のうち「助成(応募型)」は、2,969団体(うち財団2,458、社団511)となっている。(※2 内閣府による「2019(令和元)年公益法人の概況及び公益認定等委員会の活動報告」による)
これらのうち、当センターがデータとして把握している助成型財団(後述の対象A)は2,107である。
①その中で新制度下に、公益法人へ移行したものが、1,464(財団1,364、社団100)、一般法人へ移行したものが403(財団351、社団52)、社会福祉法人等が74である。
②新制度施行後に設立された財団・社団法人は164あり、そのうち公益法人の認定を受けたものが127ある。(2020年11月の調査時点)
当センターの調査では、上記2,107団体を含む3,755団体に調査表を送った。これらは、内閣府の公益法人データベース、インターネットの検索サイトやその他の情報源より新たに抽出等を行ったものである。
その調査の結果、1,840団体から有効回答を得た。(※3 これらには、財団、社団、社会福祉法人以外の助成事業を行っているNPO法人、企業、行政、他も含まれる。)
本統計では、従来通り以下の事業を行う団体を「助成財団」と定義し、一般、公益の区別はせずに対象とした。

(1)個人や団体が行う研究や事業に対する資金の提供
(2)学生、留学生等に対する奨学金の支給
(3)個人や団体の優れた業績の表彰と、賞金等の贈呈

また、制度上は公益財団法人以外の公益法人である「公益社団法人」や「社会福祉法人」、また「一般財団法人」「一般社団法人」も、活動内容が同等なものは「助成型財団」に含めている。一方、特定非営利活動法人、独立行政法人(旧特殊法人)、公益信託、企業(内部基金含む)等は分析対象から除いている。
※当初からの定義では「型」の字を含むが、以下本稿では助成財団と表記する。

図1 助成財団の位置づけ

1-2.調査分析の対象

本書で分析対象とする助成財団の母集団は、2020年度の調査結果と、過去に行ってきた調査結果の累積から、次の2通りとした。
[対象A]1988年から2020年まで32回の調査結果の
累積に基づく母集団
1988年以来行ってきた調査に回答した財団のうち、財団の概要およびプログラム内容についての記載があり、かつ現在も助成活動を継続しているものを[対象A]とする。

対象A:2,107(前回2,061※)財団
※ 2019年度調査の数値(以下、同じ)

設立年など、年度毎にあまり変化しないデータに関する分析は、[対象A]を母集団とした。

[対象B]2020年の調査結果に基づく母集団
[対象A]のうち、2020年7月の調査に回答し、最新のデータ(2019年度決算)を提供したもののうち、正味財産(資産総額)の記載があり、かつ年間助成総額が500万円以上のものを[対象B]とする。

対象B:985(前回972)財団

資産規模や事業規模など毎年変化するデータに関する統計的分析は、[対象B]を母集団とした。

1-3.今回の調査結果の要約

(1)助成財団設立数と資産、事業費の傾向

1990年をピークに91年以降、助成財団の年間設立数は顕著に減少している。
(図2)

(2)資産規模
[対象B]985団体には、2019年度決算(2020年3月末)時点では、公益財団法人805、一般財団法人121、公益社団法人34、一般社団法人13、社会福祉法人12が含まれている。
なお、2006年度から公益法人会計に新会計基準(財産の時価評価額表示等)が導入された。また、社会福祉法人についても2019年より社会福祉法が施行され、新会計基準となった。因みに対象Bの985財団のうち、新会計基準を採用しているのは976財団で、約99%は新会計基準を採用している。「一般財団法人」や「一般社団法人」の中には別会計基準を採用しているところがあるので、わずかながら現状の公益法人会計の決算では新会計基準以外が存在しているため、資産合計や資産の順位等は同一基準での比較ができない。
(表1,2,3)

(3)助成事業規模

985財団の助成事業費の合計は約1,195億円。年間助成額が5,000万円未満の財団が全体の73%を占め、5億円以上の財団は3%である。
(表4,5,6)

(4)助成事業の内容

助成の事業形態別に見ると、研究助成が抜きん出て多く、研究支援関連の助成と、文化、福祉、NPO・市民活動等の事業プロジェクトへの助成および育英奨学のプログラム数を比較すると、2011年度までは長らく5:2:3という比率であったが、2012年度以降はほぼ2:1:1となっている。注目すべきは僅かずつではあるが、時代のニーズを反映して事業プロジェクトへの助成が増えてきていることである。(図7)
助成事業の分野別に見ると、「科学・技術」「医療・保健」などの自然科学系の分野が多い。この10年間、事業分野別のプログラム数の比率はほとんど変わっていない。
(図8)
年間助成事業費の合計額は、バブル崩壊後の低金利政策等の影響もあり、1993年度より減少傾向が続いていたが、2012年度以降は、増加したものの、直近では横ばいである。