日本の助成財団の現状 -事業形態および事業分野の検討

事業形態および事業分野の検討([対象B](985財団)について)

-2020年度調査結果(2020年6月更新)-

4-1.助成財団の事業プログラムについて

財団の助成・奨学・表彰等の事業の単位をプログラムと呼ぶ。ここでは事業形態と分野についてより具体的な実態を見るために、各財団が2020年度に実施した事業プログラムを対象にプログラム単位での分析を行う。

プログラムの実施方式としては、応募の資格等を一切問わない一般公募のように公開性の高いものから、財団側で募集先あるいは助成先を選定する非公募のものまで、いくつかのバリエーションがある。データ上では、プログラムの実施方式を「一般公募」「募集先限定」「非公募/自主選考」「自主事業」の4つに区分しているが、今回の分析では「自主事業」を除いたものを助成プログラムとし、さらにそこから現在休止中のものを省いたものをカウントした。

[対象B]985財団のプログラムの合計数は2,146で、これは1財団当たり平均2.2のプログラムを持っていることになる。

このうち「一般公募」は1,438件(67%)、「募集先限定」は565件(26%)、「非公募/自主選考」は143件(7%)である。

さらに「一般公募」の中でも応募者の年齢、国籍、居住地域などに制限を伴うことが少なくない。これは、小規模の助成金を生かすために助成分野を特化したり、なんらかの限定を行うこと、すなわち優先順位(プライオリティー)を設定することは助成財団としてむしろ当然のことであり、財団の公益性と矛盾するものではない。

4-2.事業形態・事業分野の分類と特徴

プログラムは、大きくは助成、奨学、表彰の3つの助成形態に分類できるが、センターではこれをさらに15項目の事業形態(図9)に分類している。また、事業分野については、11項目(図10)に分類している。

表7 事業形態コードおよび事業分野コード

表7 事業形態コードおよび事業分野コード

図9は、事業形態別にプログラム数を示したものである。各プログラムの合計は2,564で調査対象のプログラム数2,146より多くなっているが、これはひとつのプログラムの中に複数の事業形態が含まれているものがあるからである。ただし、形態が4つ以上の多岐にわたるものは「不特定」としてまとめた。
この図を見ると研究助成が597件と圧倒的に多く、2位以下に様々な形態の事業が分布していることがわかる。研究助成の他、派遣、招聘、会議、出版等の研究関連の助成プログラム数は972件であるのに対し、公演・展示、事業プロジェクト、組織運営支援、施設・備品支援など、文化、福祉、市民活動等の諸事業に対する助成は630件、育英奨学(日本人向け国内、日本人向け留学、外国人留学生向け)が566件で、比較するとほぼ2:1:1の比率である。
研究助成を中心とする財団のプログラム構成は変わっていないが、近年のNPOの台頭を背景にして僅かずつではあるが、市民活動等の事業プロジェクトへの助成が増えてきていることがわかる。

図9 事業形態別プログラム数[対象B](総数2,146)

図10は、それぞれの事業分野に属するプログラム数を示したものである。各プログラムの合計は2,551で調査対象プログラム数2,146を上回るが、事業形態の場合と同様に、ひとつのプログラムで複数の事業分野を含むものがあるからである。また4つ以上の分野を含むものは「不特定」にまとめた。
助成事業の分野別で見ると、「科学・技術」「医療・保健」などの自然科学系の分野が多くを占める。教育が第1位にあるのは奨学金(奨日内、奨日留、奨外)をここに含めているためで、奨学金を除く学校教育や教育研究等への助成プログラムは164件となる。
多くの財団は科学・技術の振興と、人材の育成に重点を置いて助成を行っていることがわかる。因みに[対象A]2,107財団の[設立目的]の記述においても、「科学」または「技術」または「育成」の単語を含むものが827財団あった。
また、過去10年間の推移を見ても事業分野別のプログラム数の比率に大きな変化は見られない。

図10 事業分野別プログラム数[対象B](総数2,146)