前理事長メッセージ

2021年冒頭のメッセージ

2021年の新年のご挨拶を申し上げます。
2020年は、新型コロナウィルスに日本のみならず世界全体が揺さぶられた1年間でした。2021年はどのような年になるのでしょうか。すでに首都圏では感染拡大の波の中で非常事態宣言が数日のうちに出されるはずです。その中でも良い流れとしては、ワクチンの迅速な開発が国際的に進み、すでに接種が始まっていることがあげられます。その一方、英国で感染力が一層強い変異種が現れたことには驚かざるをえません。この2つの流れは、入り乱れながら、少なくともここ数か月の間は、私たちの周りを渦巻いていくはずです。この乱流の中で、私たちは平衡感覚、忍耐、平常心といったものを重んじる必要があるでしょう。

2021年は、同時に、コロナ危機をくぐり抜けた後の日本社会、さらには国際社会の姿も見え始めてくる年となるはずです。コロナ危機の中で、会社、学校、病院といった、現在の社会の基幹を担っていた制度のあり方、そして通勤、買い物、旅行といった日々の暮らしを形作ってきた慣行のあり方は、大きく変わってきています。人がリアルに集まり、移動する、というこれまで当たり前とみなされてきた事が、当たり前とはみなされなくなった結果です。

無論、遠くない将来にコロナ危機のトンネルを抜けた暁には、かつての姿に戻す部分も多々あるでしょう。その一方で、私たちが経験している変化が日常の中に根付き、新しい社会の骨組みを作ることも十分にあり得ます。感染症の波を潜り抜けた後に社会の姿が変わった事例は、ヨーロッパの中世を終わらせたペストをはじめとして数多くあります。この動きに対しても、目を凝らし、耳を澄ましていく必要があるでしょう。

同時に目を配らなければならないのは、この大きな変化は多大なコストを伴うことです。コロナ危機以前では、人がリアルに集まり、移動することによって経済と社会が回っていました。これにブレーキをかけた結果のコストを負わなければならないのは、当たり前のことながら社会的に弱い立場の人たちです。この人たちの痛みに対して手を差し伸べなければなりません。

そのしわ寄せがもたらす痛みに思いを馳せ、それを少しでも和らげる。そして、社会が生まれ変わっていくイメージを先取りして、その中の良き芽を発掘し、それを育てる。この現在と未来の両面をにらみながら助成活動を行うことが、2021年の助成財団には求められるでしょう。その積み重ねの結果として、新しい価値を創り出していくことができればと願います。

   2021年1月

公益財団法人 助成財団センター
代表理事・理事長 山岡 義典