ウクライナの衝撃を助成財団としてどう捉えるか
年初から感染が急拡大し、2月初頭には日本国内で1日当たり10万人以上の感染者数を出していたオミクロン株の猛威がようやくピークを過ぎ始めた2月24日、私たちは大変な衝撃を受けることとなりました。
ロシア軍が、大義名分もなく大挙して国境を突破、隣国ウクライナに侵攻したことです。「侵攻」と曖昧な言葉を使っていますが、まぎれもない宣戦布告なき侵略戦争です。ウクライナ軍も総力を挙げて迎撃しており、今後どのように展開していくかはよくわかりません。
ベルリンやウィーンなどヨーロッパの中枢都市から車で半日余りあれば行けるウクライナにおいて、民間人や民間施設に対する無差別砲爆や正規軍同士の本格的な衝突が行われるなど、考えてもいませんでした。時計の針が第二次世界大戦終結の1945年以前に戻ったのではとさえ思えます。傀儡政権を立てれば1件落着という話しでは全くないでしょう。ウクライナにとってのみならずロシアにとっても、長い不幸の始まりと思います。
まだ1カ月も経っていませんが、すでに最低でも数千人の死傷者(民間人を含む)が出ていると言われており、また240万人ものウクライナ人難民が国外に脱出しているとのことです。日本にも、3月2日から12日の間に29人が入国したと官房長官が記者会見で明らかにしています。首都キエフの攻防戦が激化してきていますので、この数字はさらに増えるでしょう。強い怒りとともに、憂鬱な思いにとらわれます。
ウクライナの影響は、このような直接的な損害だけにとどまりません。西側諸国は大規模かつ強力な経済制裁をロシアに加えていますし、ロシアに進出した企業や店舗は閉鎖し、撤収を始めています。ロシア側も対抗措置を次々に打ち出し始めました。ロシアが世界有数の資源大国であることを考えると、この制裁のループは、すでにコロナ禍で不安定化した世界経済を一層低迷させることになります。
私たちの日常生活においても、すでに上昇を続けてきたガスやガソリンが、さらに高騰を続けています。またウクライナが世界有数の穀倉地帯であるため、穀物価格の上昇を加速するでしょう。食品への兆候はすでに現れており、コロナ禍で困窮している人たちを、一層困窮させることになるはずです。
ウクライナからの難民引き受けや在留ロシア市民の長期滞在支援も含め、私たちの身近な生活環境で民間助成財団に求められることは、限りなくあることでしょう。
現在ウクライナで行使されている圧倒的な軍事力に比べれば、民間助成財団ははるかに微力です。戦闘自体は、民間助成財団の力でどうなるものではありません。しかし、歴史を前進させるのはあくまで人間の思い、人間の善意です。むき出しの軍事力ではないはずです。このことを心に留めながら、助成活動に前向きに取り組んでいければと願っています。
世界史の大きな転換点とも言うべきウクライナへの侵略戦争について思いを馳せながら、自らの足元で取り組むべき課題は何かを考え、また共に語り合い、実践していきたいものです。