理事長挨拶

理事長就任にあたって

このたび、理事長に選任されました出口正之です。私は、個人の突拍子もない希望を許容する企業風土の企業に就職し、学生時代に勉強していた事項から、人事部に直訴する形で20代半ばから企業財団に出向しました。助成活動・総務・会計業務の経験を経て、助成財団の活動をライフワークと考えるようになりました。ジョンズ・ホプキンス大学のレスター・サラモン教授が運営する「フィランソロピー研究員」にアジア人として初めて選任され、これも異例の形で留学を許可してもらい、財団等の諸制度の研究を行ってまいりました。

その後、国立大学教授に就任、税制調査会や内閣府公益認定等委員会の委員として制度改革に「政府側の一員」して関わってまいりました。残念ながら、こうした制度改革で皆様方に大きなご迷惑をおかけしていることに、責任を痛感するとともに内心忸怩たる思いでおります。

当センターが設立されたのは1985年。世界で二番目に設立された助成財団センターでした。当時は、ロックフェラー財団等に象徴される助成財団は、政府ができる前に民間公益活動が存在していたアメリカの建国の歴史的特殊性とともに語られ、他の国ではそれほど発達しないものと思われていました。

実際に当時の欧州でも助成財団はわずかに存在するだけで、たった7つの助成財団が集まって欧州財団センターが設立されたのは、日本の4年も後のことでした。

ところが、その後の企業のCSRやSDGsなどの社会に対する積極的な役割の増大、新興国での経済成長、規制緩和の流れ、ネオリベラリズムの浸透による個人の巨大資産家の誕生などから、今では、欧米に限らずアジア・南米・アフリカを含む世界中で個人や企業による助成財団の設立が続々と始まっています。「助成財団センター」に類する組織も誕生し、欧州財団センターは実に1万団体にまで膨れ上がっております。

この現象は助成財団の活動とほぼ同義で用いられる「フィランソロピー」という言葉からも「フィランソロピーの黄金時代の到来」とまで呼ばれています。また、助成財団は当然、非営利セクターの中心的な存在で他の非営利組織を助ける存在として一目置かれており、そこで働く人々も敬意を集め、きらきらと輝いているようにも思います。

翻ってわが国の現状を顧みると、主務官庁時代の指導監督文化からなかなか脱却できずにいるばかりか、制度改革において、様々な「都市伝説」が誕生し、誤った指導、行き過ぎた自己規制などから、助成財団はあれもできないこれもできないという窮屈な状態にあるように思えてなりません。

さらに、当センターに関して言えば、基本財産の取り崩しを余儀なくされるなど、持続可能性に黄色信号が灯っている状態といえます。

したがって、理事長としては当センターの再建及びイノベーションを通じて、日本の非営利セクターの中心的存在としての当センターの活性化を託されたものと思っております。「公益の増進」という公益法人制度改革の立法趣旨をもう一度噛みしめ、助成財団の皆様方とともに、助成活動について社会一般の理解・増進に努め、我が国の民間公益活動の発展に寄与したいと思っております。よろしくお願いいたします。

   令和4年7月

公益財団法人 助成財団センター
代表理事・理事長 出口 正之