「公益法人におけるテロ資金供与対策について」FATFに関する注意喚起 (2022.08)     

内閣府がFATFに関して注意喚起と資料を公表

- 内閣府公益法人メールマガジン 臨時号(令和4年8月4日発行) -

内閣府が「公益法人におけるテロ資金供与対策について」と題するFATFに関する注意喚起と資料を公表しました。下記をご覧ください。

https://www.koeki-info.go.jp/administration/terror_shikin_taisaku.html

公益法人がテロ資金供与に巻き込まれないため、テロ資金供与のリスクを認識し、自らが自身の実施する事業について、リスクの評価、対策の検討を行うことが重要です。

海外での事業の有無を問わず、今一度、目的外での資金流用が行われないための対策や、計画した事業を着実に実施するための対策が行われているかどうか、内閣府の資料を参考に、改めて御確認をお願いします。

公益法人におけるテロ資金供与対策について(概要)

https://www.koeki-info.go.jp/administration/pdf/terror_shikin_gaiyou.pdf

<対策例>
・自法人や協力団体等にテロリスト等との関わりがないことの確認
・助成事業等により資金を支出した場合、事業の実施状況や実施結果の確認
・意図した相手に確実に送金すること、相手が受領したことの確認 等

これまでもこの問題を取り上げてきた出口理事長は「今までのものと比べてはるかに充実した内容となっています。」との一方で「この問題について日本の公益法人関係者の意識が極めて稀薄であり、非常に危機感を有しております。」とも述べています。

出口理事長が、公益社団法人 日本フィランソロピー協会『Philanthropy(フィランソロピー)No.267』に「必須知識としてのFATF」を寄稿しています。

公益社団法人 日本フィランソロピー協会のご好意で、下記に寄稿文を引用させていただきました、ご参考になれば幸いです。

「必須知識としてのFATF」

 日本のフィランソロピー関係者に、ぜひ知っていただきたい事項にFATF(ファトフ)というものがある。FATFは、多国間の政府によるテロ資金等の流れを相互チェックする自主規制対策のようなもので、正式名称を説明するとかえって分からなくなるので、ここではFATFのままにしておこう。読者に分かりやすく言えば、各国相互で、テロ資金等に流出しないように、フィランソロピー政策の審査を行なっているのである。2008年に日本に対する相互審査報告書が初めて出され、「テロ資金供与への悪用リスクや、資金洗浄およびテロ資金対策措置に関する認識向上のための非営利組織セクター(NPO)に対するアウトリーチ活動を行なっていない」と指摘された。ここでいうNPOは非営利組織全体のことを言っている。背景には、フィランソロピーの資金がテロ組織に流れているという実態がある。
  日本のフィランソロピー関係者で「テロ資金供与というリスクへの認識」を持っている人はどれくらいいるだろうか?FATFではこれまで何度も非営利組織に対する膨大な注意報告書を作成している。その中には善意の寄付がテロリストに流れたのではないかという疑いを持たれ、各国当局の捜査対象となっていることが事例として挙げられている。とりわけ、国境を超える資金供与については注意が必要である。
 ところがこれが日本の関係者には全く浸透していない。2021年8月30日に出されたFATFの第4次相互審査結果によって、わが国は「重点フォローアップ国」として事実上合格点がもらえなかったのである。個別の内容を見ると、金融規制に対する評価はおおむね良好だったのにもかかわらず、「非営利団体の悪用防止」だけが最低ランクNC(適合せず)とされ、全体の評価を大きく押し下げることになった。
 「日本では、非営利組織等セクターに関するテロ資金供与リスクについての理解が十分ではなく、テロ資金供与に悪用されるリスクがある一部の非営利組織等に対し、リスクに基づいた具体的措置を講じていない。複数の日本の非営利組織等がリスクの高い地域で重要な活動を行っており、非営利組織の当局による非営利組織の当局による非営利組織等セクターへの効果的なアウトリーチやガイダンスを早急に強化する必要がある」とされた。
 フィランソロピーの基本は冒険的で挑戦的であることだ。しかし、それがテロリストに流れては元も子もない。ウクライナ難民に対する人道支援へのニーズが高まる中で、慎重にし過ぎてもいけないが、無意識でいることはあってはならないのだろう。

※ FATFとは、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策の国際基準作りを行うための多国間枠組み。金融活動作業部会(Financial Action Task Force)の略称。

出典

・書名
機関誌「Philanthropy(フィランソロピー)」

・発行
公益社団法人 日本フィランソロピー協会
〒100-0004 東京都千代田区大手町2-2-1 新大手町ビル244

・発行者
髙橋 陽子(公益社団法人 日本フィランソロピー協会 理事長)

・発行日
2022年6月1日(No.267)

・引用ページ
24ページ:「第20回 寄付探訪」より