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NO.27 山岡義典理事長退任記念ウェビナーが開催されました

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山岡義典理事長退任記念ウェビナーが開催されました
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(2022/9/13(公財)助成財団センター発行)

<事務局冒頭メッセージ>

現在、世界トップの研究力を目指す大学(国際卓越研究大)を運用益で長期支援(最長25年)する10兆円規模の「大学ファンド」制度、さらに、準トップ大の研究基盤の強化(数千億規模を視野)が進められています。研究助成をおこなう民間助成財団にとって、今後の民間研究助成の在り方にも影響を与える大きな問題と捉えています。

文部科学省科学技術・学術政策研究所の調査では、世界で2018~2020年に発表された自然科学分野での論文数や注目度の高い論文の数において、日本は多くの指標でいずれも、前年度から順位を落としています。その要因の一つに、教育・研究基盤への投資の差があるとの分析を考えますと、日本の研究力の低迷や存在感の低下の歯止めには、国の大きな資金支援の強化も必要であると理解しています。

しかし、国は平成23年に「提言型政策仕分け」として、科学技術においては、投資に見合う成果が現実に出ているかなどの視点から、改革をおこなっています。当時は何故一番でなくてはならないか、今では何故こんなにランキングが落ちているのかと言われる政策の影響を受け、学び研究する人々が日本で目指すべき目標を見失ったのかもしれません。そのような中でも、周りに左右されず、研究が出来る、民間研究助成の価値、そして、研究者とイコールパートナーのこころを持った民間研究助成の存在は、やはり重要です。

一方、今夏、NPO法人ジェンダーイコールの高校生メンバー4人が制作したYOUTUBE「リケジョと呼ばないで」が話題になりました。進学相談の教師が、理系の進学を希望する女子生徒に対し、珍しいと反応するものです。この動画はジェンダーバイアスに関する問題提起が目的のようですが、今でも理系を目指す女性を珍しいと思う教師がいるのかと心から驚いてしまいました。未来の芽が失われてしまうように感じます。学び研究する環境も見直されつつありますが、まず、ジェンダーを問わず、学びたくてもその道に進めない学者の卵たちをまず救うこと、それとともに、10代の好奇心を満たし、未来の芽を育むことが大切です。

このような学びに向かう心を育む支援が、これからの日本のイノベーションの創出に繋がるのではと、考える今日この頃です。

INDEX・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.山岡義典理事長退任記念ウェビナーが開催されました
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2.「助成財団センター・レポート ~ 日本の助成団体の状況2022」 刊行に寄せて 
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3.セミナーご案内
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4.センターからのお知らせ
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1.山岡義典理事長退任記念ウェビナーが開催されました
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「助成財団の今後の展望 ~歴史的な視点を踏まえて~」というタイトルの下、8月29日(月) 午後に山岡義典理事長(現会長)退任記念ウェビナーが開催されました。

創業時のトヨタ財団で日本人初のプログラム・オフィサーとして活躍したことを初め、現代の日本の助成活動や非営利活動の土台を形作った山岡前理事長。そして1980年代から民間助成活動に従事し、世界的な非営利組織研究の大家である故レスター・サラモン教授の下で学び、さらに国立民族学博物館と総合研究大学院大学において教鞭をとり、日本の非営利組織、民間財団研究の第一人者として国際的にも知られている出口正之現理事長のお二人を中心に据えたウェビナーだけに、大きな反響を呼び、250名余の参加をいただきました。

山岡前理事長のプレゼンテーションと出口理事長のコメントのあらましは以下のようなものでした。

山岡前理事長は、助成財団とは「設立者の思いとともに時代の動きを背景に歩み続ける社会的な存在」というコンセプトに基づき、話を展開していきます。森村豊明会、原田積善会、斎藤報恩会などの第二次世界大戦前に日本の助成活動の曙を担った民間助成財団がどのような設立者の思いと時代の社会・経済的流れの中で誕生したか、丹念に紹介されます。しかしながら、山岡前理事長の関心は、過去の静止画的な事実の追求ではありません。前述したコンセプトを下敷きにして、出捐者の特定の思いを背負って活動を開始した助成財団が、時代の流れの変化に対応して自らの助成活動をどのように見直していったのかを描き出します。

最後に、次のようなメッセージで、山岡前理事長はプレゼンテーションを締めくくられました。

・設立者が大きな思いを抱き、その実現に向けて助成財団は設立される。

・他方、設立者の思いは、その時代の社会・経済的流れの中で生まれる。時代の流れの変化への対応を怠ると、設立者の思いが助成財団の活動に対する足枷になってしまう。

・設立者が今生きていたら、「何をせよと言うだろう」と常に問い、今の時代に応じた助成活動を展開する必要がある。そのためには、未来の社会や経済がどのようなものかを想像し、それに向けての兆しをつかむことが欠かせない。

これに対する出口理事長によるコメントは次のようなものです。

出口理事長から見ると、現在の助成財団の多くは、時代の流れの変化に積極的に対応することができる環境が整っているようには思えません。「公益法人を組織的に支援あるいは公益法人そのものを研究する助成財団」の少なさ、さらには助成財団の時代の流れへの対応を促す存在である中間支援組織の脆弱さを出口理事長は明快に指摘します。そして、山岡理事長とのやり取りの中で、現在の助成財団の停滞性、保守性の歴史的な源として、旧公益法人制度の下での主務官庁制度の存在が浮かび上がります。主務官庁制度それ自体は、公益法人制度改革の際にすでに廃止されています。しかし、この制度の下で培われた守旧的かつ縦割りのメンタリティが濃厚に現在の助成財団に残るというのが、出口理事長の見立てです。

このメンタリティを克服するための処方として出口理事長が共鳴するのは、山岡前理事長がプレゼンテーションの末尾で触れた未来を想像することの重要性です。「未来の社会や経済がどのようなものかを想像し、それに向けての兆しをつかむ」。それによって、失敗のリスクを含みながらも、その兆しをテーマとする企画に向けて先駆的な助成を行う勇気が生まれてくる。助成財団の今後の展望を切り開くために、この「未来を想像」することが不可欠であり、積極的に推し進めることが必要という点については、新旧理事長の意見に齟齬はありません。

この後、質疑応答に入っても、上で挙げた論点について質問や意見交換が活発に行われました。

出口理事長は、今後も、このような助成財団をめぐる教養的なウェビナーができればと考えていますので、ぜひご期待くださればと思います。

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2.「助成財団センター・レポート ~ 日本の助成団体の状況2022」 刊行に寄せて 
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助成財団センターは、これまでの「助成財団要覧」をリニューアルし、新たな出版物として「助成財団センター・レポート ~ 日本の助成団体の状況2022」を近日中に刊行いたします。この機会に、1980年代に日本で初めての助成財団に関するディレクトリーである「助成財団要覧」の立ち上げに従事した山岡義典前理事長から、メッセージが寄せられましたので、以下で紹介いたします(事務局)。

この度、1985年より30年以上にわたって助成財団センターが隔年で製作・刊行してきた「助成団体要覧」がコンテンツも新たに「助成財団年報」へとリニューアルされる事となりました。

振り返ってみると、1985年11月に助成財団資料センター(助成財団センターの設立当時の名称)が発足する以前から、この日本の民間助成財団についての網羅的な要覧作成の企画は進んでいました。当時の公益法人協会専務理事友野俊平さんや、日本国際交流センターに在籍していた伊藤道雄さん((特活)アジア・コミュニティ・センター21現代表理事)、公益法人協会現理事長の雨宮孝子さん、そして私(山岡)などが中心となって情報を収集し、編纂を行い「日本の助成型財団要覧-1985年版-」として1985年6月に出版に至りました。助成財団資料センターが設立されるよりも前に刊行されたことは、要覧の重要さを物語っています。インターネットが普及する前ですから、この時点では要覧だけが、助成金を探す個人や団体に対して自分たちの研究や活動にマッチした助成金を配分してくれる助成財団を示してくれる存在でした。しかも、日本の企業が続々と助成財団を設立している時期に当たります。社会的に大きなインパクトを与えた出版物でした。

しかし、このように大きな意義を持った「助成団体要覧」にも時代の波が押し寄せてくることとなります。とりわけ1990年代から始まったデジタル化とインターネットの爆発的な普及は、社会における情報の作り方、見せ方、普及のやり方などを決定的に変えることとなります。とりわけインターネット上の大量の情報の中から、瞬時の内に欲する情報をピンポイントで発見し提示する「検索機能」の与えた影響は深甚なものがありました。それと共に、必要な情報にたどり着くまで相当な手間と時間を要する要覧というフォーマットが持つ利便性が相対的に損なわれていった事実は否めません。加えて、インターネットの普及がもたらした際立った変化は、「発信の重視」です。この潮流の中では、助成財団についての膨大な情報を収録しながら、それについて寡黙で、何事かを発信しない要覧と社会一般の感覚の間に齟齬が生じてきたのも否めません。

このように考えると、「助成財団要覧」からインターネットとの連携を作りこみ、併せて助成財団に関するタイムリーなトピックについての分析、解説を収めた「助成財団年報」へのリニューアルは必然の発展といえるでしょう。折しも、今年度は出口理事長、花崎専務理事を柱石とする助成財団センター新執行部の船出に当たります。「助成財団年報」が日本の民間助成財団に対する関心を一層高めることを期待しながら、筆をおきたいと思います。

※ 企画をスタートさせた当初は「助成財団年報」としておりましたが、助成財団センターの年報ではなく、助成財団の現状をお届けするという事で、名称を「助成財団センター・レポート ~ 日本の助成団体の状況2022」に変更いたしました。何卒ご了承ください。

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3.セミナーご案内
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◎助成財団センター主催セミナーについてのご案内

新型コロナウィルス感染症対策のため、皆さまの安全確保を最優先に考え、Zoomでの開催を基本としています。在宅での受講も可能です。

(1) 助成実務セミナー(10月)開催のご案内

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4.センターからのお知らせ
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◎助成財団フォーラム 2022開催の予定

助成財団センターの恒例行事である助成財団フォーラム2022の日程は、当初11月25日(金)を予定しておりましたが、諸般の事情により、2023年2月3日(金)を予定させていただきます。テーマなど詳細が決まりましたら、改めてお知らせいたします。

◎新入会員のご紹介

一般財団法人 デロイト トーマツ ウェルビーイング財団さま、公益財団法人 公益推進協会さまにご入会賜りました。心より感謝申し上げますとともに、今後とも情報提供に務めさせていただきます。

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★ ご寄付のお願い https://www.jfc.or.jp/donation/
助成財団センターでは当センターの事業活動にご理解とご賛同をいただき、是非ご寄付をお寄せくださいますよう心よりお願い申し上げます。
★ 会員募集中 https://www.jfc.or.jp/recruitment/
当センターの中間支援組織としての果たすべき役割、責任は極めて大きいものと自覚しておりますが、皆さまのご参加とご協力があってこそのものです。
多くの皆さまに会員として当センターを支えていただきたく心よりお願い申し上げます。
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JFC e-mail newsletter No.26
編集・発行 公益財団法人 助成財団センター
発信日 2022年9月13日
編集・発行人 花崎 和彦
公益財団法人 助成財団センター
〒160-0022 新宿区新宿1-26-9 ビリーヴ新宿4F
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