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No.9 東日本大震災が発災してから10年が過ぎました

JFC e-mail newsletter NO.9
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東日本大震災が発災してから10年が過ぎました
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(2021/03/12(公財)助成財団センター発行)

2011年3月11日に東日本大震災が発災してから10年が過ぎました。
この節目の機会に、「石巻復興支援ネットワーク・やっぺす」(やっぺす、とは宮城県石巻の言葉で、「一緒にやりましょう」という意味だそうです)代表理事の兼子佳恵さまにご寄稿をいただきました。「やっぺす」は、地元石巻での女性の活躍推進・子育て就労支援、復興の担い手育成・まちづくりなどの分野で活動されておいでです。

兼子さまの淡々とした書きぶりの中から、浮かび上がってくることがあります。
発災後に首都圏をはじめとして全国から被災地に届いた善意と共に、駆け付けた助成金の出し手の何気ないいつも通りと思っている仕事のやり方、いずれも、私たちから見ればごく当たり前のものですが、活動に追われる中、想像以上の重圧を兼子さまと、周囲の被災者の方々に与えたことです。

助成財団のような助成金の出し手にとっては、申請者や助成対象団体がきちんと申請書や報告書などの文書作成を行い、ミスのない会計管理をするのは当然という感覚があります。そして、担当者と申請者や助成対象団体の間には、専門性の高い用語が飛び交います。
これは、相手が文書作成や会計処理、さらには情報の発信というのが日常茶飯事となっている組織でしたら何の問題も引き起こしません。しかし、地域社会のコミュニティでの営みの間では、高い壁を築きかねません。

今回、出し手の「助成団体や中間組織」の認識と、応募者・受け手の意識の間には、大きなギャップがあることに気付かされました。
助成団体として、受け手の真のパートナーとなり、ともに社会的課題の解決に取り組んでいくには、このギャップの存在を理解した上で、これまで以上に、受け手に寄り添い、身近な存在になることが求められています。

兼子さまのご寄稿は、この見えにくく、かつ難かしい問題がどのようなものであるのかを浮き彫りにされていると感じます。それとともに、この難問への答えを出すための手がかりをいくつも示してくださっています。ご一読いただければ幸いです。(事務局)

INDEX・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.震災10年に想い願うこと。
  特定非営利活動法人石巻復興支援ネットワーク
  代表理事 兼子 佳恵
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2.2020年度 公益事業体験アルバイトを終了するにあたって
  大学院生 樋口 桃子
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3.お知らせ
◎「2021年度 大学生・大学院生の公益事業体験アルバイト」募集について
◎「助成財団センター主催セミナー(Zoom開催)」について
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1.震災10年に想い願うこと。
  特定非営利活動法人石巻復興支援ネットワーク
  代表理事 兼子 佳恵
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2011年3月11日午後2時46分、宮城県沖を震源とする巨大な地震とそれに伴う大津波が発生しました。のちに「東日本大震災」と呼ばれるこの地震のことは、みなさんご存知かと思います。
巨大な津波が押し寄せ、約1万6000名の尊い命が奪われ、2000以上の方々がいまもなお行方不明となっています。
また、震災後の避難生活や仮設、災害復興公営住宅などで自殺や病で亡くなる「震災関連死」も3000を超えています。「1万6000人が亡くなった」と書いても、現実感は生まれにくいですが、「たいせつな人、愛する人が亡くなる出来事が1万6000回あった」のように自分事としてみると想像をはるかに超えた悲しい出来事であったことがご理解いただけるかと思います。

私自身も、今では鮮明に覚えている記憶は途切れ途切れになりました。震災から3日目に初めて家の外を歩き、甚大な被害状況を目の当たりにした時は、「生かされた自分にできることを何かしないと生きている意味がないのではないか。」そんな自問自答を繰り返しました。学歴や特別な職歴・経験もなく、研究者でもない、ただの一市民の立場から、災害により生活が一変した当事者そして、子どもたちの夢を守りたいと願う親として、地元や全国のたくさんの方々のご支援を受けながら、2011年5月に、NPO法人「石巻復興支援ネットワーク通称:やっぺす」をPTA仲間と共に立ち上げて、12月に法人化して以降、今日までさまざまな事業に取り組んでまいりました。

発災直後から、石巻には全国からたくさんの支援者が来てくださいました。
しかし、最初のあいさつの代わりに学歴を聞く方が多くおられ、被災当時のボロボロの身なり、年齢や性別で差別を受けたこともありました。また、活動はできても、飛び交う専門用語やカタカナ言葉もわからず、外部から来てくださった支援者の方々とコミュニケーションをとるにはどこから手を付けて何をすればいいのかもわからない。自分たちが取り組もうと思うことを伝える術がない。
自分の無力さばかりが目につき、学歴へのコンプレックスからか、多くの支援者のコミュニティに関わることができない時期があり、心を病みながら仕事をしていた時期もありました。

一方で、そんな苦しい精神状態の中で、本当の意味で寄り添い、支えになってくれた優しいつながりや仲間もできました。そして、そのスタッフや「やっぺすの輪」のみなさんと共に「子育て支援」「仮設住宅、復興公営住宅のコミュニティ支援」からスタートして、「仕事づくり」「創業・起業家支援」「人財育成スクール」「復興コーディネート」「ナカジマコーポレーションさまとの協業事業として、無事かえるシリーズの監修」「ママ子ども食堂」「女性の活躍推進」に亘る復興のフェーズに寄り添った事業を発展的に継続してくることができました。
自分が失敗し傷ついても、地域の子どもたちには夢をもつことを諦めてほしくないと願って、立ち止まっても前を向いて、少しの時間でも学び続けながらの、あっという間の10年でした。

昨年からなかなか収束がみられないコロナの影響の中、震災からの復興は見える形でどんどん進んでいる一方で、顕在化した根深い地域の諸課題があります。
DV、子どもの虐待、理解されづらい子育てや介護の課題、「貧困」や「機能不全の家族」への支援はまだまだこれからです。
そうしたことから、民間だからこそできる、スピード感のある助成事業の展開がさらに求められていると思います。
子ども食堂や相談窓口を設置することでみえてきた、緊急性の高い「パントリー事業」「シェルター事業」を昨年からスタートさせています。私たちがスピード感をもって展開できたのは、助成金等を展開している組織の存在とその柔軟な対応にあります。

私は、震災前から12年間ほど、地元でボランティア活動を続けてきました。活動当初のやっぺすは、そうした経験があったにも関わらず、地域の現状や必要な支援をお話しすることができても、助成金の申請や報告の書類を通してお伝えすることができていませんでした。
それ以前に、助成団体の皆さんが何を求めているのか、書類にどんな内容を記載して欲しいのかすら捉えることも難しい状態でした。
経験を重ね今、改めて周りを見渡すと、都市でも地方都市でもない、地方で市民活動を支える大半の方々はボランティア団体だけの地域しか知らない人たちであることから、できていない方が「あたりまえ」だという現状に気づきました。今では、「知らない」から仕方がないのだと思うことができます。
「NPOだからこんなこと知っていてあたりまえ」という前提は、全てのNPOに対して言えることでは決してありません。地域に根ざして本質的な活動をしても知らない、できていない団体は、まだたくさん存在しています。みんな、当初の私たちと同様に、紙に書き、言葉に落とし込むことができていないだけで、コミュニケーションをとることができれば伝えることができます。もし、助成団体の皆さんが本当に必要な支援先を探すのであれば、現地に足を運び、現地の活動団体とコミュニケーションを取り、どこの誰が申請するものなのかを自らの目で確かめていただくことを願っています。
やっぺすが、平成29年度のふるさとづくり大賞で内閣総理大臣賞を頂戴することができたのは、できていないところがあっても根気強く私たちに寄り添い、耳を傾け、そして応援してくださった、助成団体をはじめとする、皆さんのおかげなのです。

最後になりますが、私たちの団体は、これまでの10年間の活動を経て「復興を目指す」から、ここで生まれてよかったと思える「ふるさとづくり」にたどり着きました。
そして、10年という節目を機に、私たち地元住民は、「被災地」で暮らす「被災者」という重い荷物をおろして、「自慢のふるさと」で暮らしながら、さらに住みやすいまちにするため、自らを鼓舞する「一市民」になりたいと思って活動しています。
「特別な誰かが」でなく、「普通の誰もが」やってみたいことが受け入れられ、それぞれができることにより、さらに応援しあえる優しいつながりの輪が広がることで、「自分らしく生きるが叶えられるまち」を目指しています。これからも微力でも無力ではない自分を信じて歩み続けます。
私たちの活動が、未災の地でこれから起こるかもしれない災害が起きた時の備えのきっかけの一つになることで、多くの方々が「もし自分だったら」と思いを巡らせ、はじめの一歩を躊躇せずに歩みだして欲しいと心から願っております。

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2.2020年度 公益事業体験アルバイトを終了するにあたって
  大学院生 樋口 桃子
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10年前の東日本大震災から今回の新型コロナウイルス感染症の蔓延拡大に至る中で、皆様には様々な思いがおありになると思いますが、私が考えるようになったのは、“人とのふれあい”についてです。

震災では、多くの人が大切な人との別れに直面し、助け合いの精神や人とのふれあいの大切さについて学んだように思います。今回のコロナでは、その人とのふれあいまでが制限される世の中になり、またその大切さが一層浮き彫りになった気がします。

私の場合は、実家を離れ首都圏での一人暮らしのため、容易に家族や地元の友達と会えなくなってしまいました。また、学校の友達とも大学への通学許可が出ても、ゼミはオンラインで行われ、以前の様に学校でみんなと集まることは少なく、想像以上に寂しい状況でした。
その中で、今はきっと誰もが寂しさを抱えているはずだから、自ら積極的に行動していかなくては、と次第に思い始めました。小さなことですが、離れた家族や同期の友達に自分から頻繁に連絡を取るようにしたり、コロナ禍、他大学から入学したゼミ生が早く馴染めるように、Zoomを通した雑談や勉強会ができる時間を設営しました。オンライン上でも“人とのふれあい”を求めて動くことで、逆に自分は孤独ではなく、たくさんの支えてくれる人が居るのだと気付き、救われた気分になることができました。

この助成財団センターで公益事業体験に従事する中では、コロナに関する研究助成支援を打ち出したり、九州豪雨災害の被災地の団体へ激励のメッセージを送ったり、様々な支援活動をされている団体のお話を伺うことができました。そうした折に改めて、自らが出来ることを少しずつでも実行していくことで、必ず良い方向に進んでいくのではないかと感じた次第です。

震災やコロナ禍のような、人の力だけではどうにもならない想定外の緊急事態は、気候変動などの影響もあり、今後も直面することだと思います。そうならないことを願っていますが、緊急事態を想定し、各自が本当に大切なものは何なのか見つめ直すとともに有事に迅速に対応できるよう社会全体の在り方も変えていかなければならないかもしれません。
最後の学生生活であるこの1年で、やりたかったことが叶わず、悔しい思いもあります。しかしこのコロナ禍の経験を「タダで返すものか」という気持ちをバネとして、これからの社会人生活も頑張ります。

~2021年度の公益事業体験アルバイト生に向けて~
初めて聞くような話題や用語も出てくると思いますが、社会についての理解を一歩進めよう!といった好奇心を持って出来ると楽しいはずです。応援しています。

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3.お知らせ
◎「2021年度 大学生・大学院生の公益事業体験アルバイト」募集について
◎「助成財団センター主催セミナー(Zoom開催)」について
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◎「2021年度 大学生・大学院生の公益事業体験アルバイト」 募集について
・公益財団法人 助成財団センターは、大学生・大学院生の方が、10~12ヶ月間、当センターの公益事業に携わる、『2021年度大学生・大学院生の公益事業体験アルバイト』を募集します。
対象となる大学生・大学院生の皆さまにご案内いただけますと幸いです。

(詳細)
http://www.jfc.or.jp/wp-content/uploads/2021/JFC_Arbeit_2021.pdf
(お問合せ先)
助成財団センター 花崎/両角
TEL:03-3350-1857 MAIL:office@jfc.or.jp

◎助成財団センター主催セミナー(Zoom開催)について
・新型コロナウィルス感染症対策のため、皆様の安全確保を最優先に考え、すべてZoomでの開催としています。在宅での受講も可能です。

**助成実務ステップアップ・セミナー(3月)
助成実務セミナーに参加された方々が、セミナー後にそれぞれの助成事業の実務で直面している問題・課題などについて相互に共有し、意見交換等を行うことで、その解決/改善に役立てることを主な目的とするセミナーです。
(日 時) 3月26日(金) 14:00~17:00
(対象とする参加者)
原則として、2020年9月までの「助成実務セミナー」にご参加いただいた方(以外でご希望の方は、お問合せください)。
http://www.jfc.or.jp/wp-content/uploads/2013/04/20210326kenshu.pdf

**助成実務セミナー(4月)
主として助成事業の経験が浅い運営責任者ならびに実務担当者を対象として、助成事業に関する基本的な知識とノウハウを目的に助成財団センター理事 渡辺元が3回に亘って、分かり易く講義をいたします。(1回ごとのご参加も可能です。)
4月8日(木) 14:00~16:30
1.「民間助成財団および助成業務について」
4月15日(木) 14:00~16:00
2.「助成事業を運営するために-助成事業とは何か、その運営留意-」
4月22日(木) 14:00~16:00
3.「助成事業のフォローアップ-意義、実施方法、情報の活用-」
http://www.jfc.or.jp/wp-content/uploads/2013/04/202104kenshu.pdf

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★ 寄付のお願い http://www.jfc.or.jp/profile/donation/
助成財団センターでは当センターの事業活動にご理解とご賛同をいただき、是非ご寄付をお寄せくださいますよう心よりお願い申し上げます。

★ 会員募集中 http://www.jfc.or.jp/profile/collection/
当センターの中間支援組織としての果たすべき役割、責任は極めて大きいものと自覚しておりますが、皆さまのご参加とご協力があってこそのものです。
多くの皆さまに会員として当センターを支えていただきたく心よりお願い申し上げます。
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JFC e-mail newsletter 号外
編集・発行 公益財団法人 助成財団センター
発信日 2021年3月12日
編集・発行人 田中 皓

公益財団法人 助成財団センター
〒160-0022 新宿区新宿1-26-9 ビリーヴ新宿4F
TEL:03-3350-1857 FAX:03-3350-1858
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